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『抱擁、あるいはライスには塩を』江國香織

抱擁、あるいはライスには塩を抱擁、あるいはライスには塩を
(2010/11/05)
江國 香織

商品詳細を見る

<評価>★★★★☆
三世代、百年にわたる「風変りな家族」の秘密

東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。1981年、次女の陸子は貿易商の祖父、ロシア革命の亡命貴族である祖母、変わり者の両親と叔父叔母、姉兄弟(うち2人は父か母が違う)の10人で、世間ばなれしつつも充実した毎日を過ごしていた。柳島家では「子供は大学入学まで自宅学習」という方針だったが、父の愛人(弟の母親)の提案で、陸子は兄、弟と一緒に小学校に入学。学校に馴染めず、三ヶ月もたたずに退学する。陸子は解放されたことに安堵しつつ、小さな敗北感をおぼえる。そもそも独特の価値観と美意識を持つ柳島家の面々は世間に飛び出しては、気高く敗北する歴史を繰り返してきた。母、菊乃には23歳で家出し8年後に帰ってきた過去が、叔母の百合にも嫁ぎ先から実家に連れ戻された過去がある。時代、場所、語り手をかえて重層的に綴られる、一見、「幸福な家族」の物語。しかし、隠れていた過去が、語り手の視点を通して多様な形で垣間見え――。

江國さんの描く世界観が大好き。ちょっと普通の人よりずれていて、でも確固たる信念を持っている人々。なんだか海外小説を読んでいるような感覚でした。

大きな洋館にみんな住んでいるんだけど、この洋館がとっても素敵。図書室があったり、サンルームがあったり、居間やお客様室みたいなのもあって。それに、広い庭があって、そこで探検したり、運動したり。。子供を育てるには、物凄く良い環境だと思いました。図書室があるこの洋館に私も住んでみたい。

柳島家の教育法は変わっていて、学校には行かせず、家で家庭教師をつけて勉強させるんです。これもまた私の憧れです。分からない事はすぐに聞けるし、学年に縛られることなく先に進むこともできるのだから。大人はすぐに協調性を身につけさせる、とか言って学校に行かせるけど、それは親や周りの人が教えても十分に身につくんじゃないかな。その成果か、柳島家の人々はみんなわりと高学歴。

読んでいくと、タイトルの意味がじんわりと分かるようになります。「ライスには塩を」とは、「自由万歳」という意味。洋皿にのったライスには、塩をかけて食べたくなるけど、小さい時には塩分の取りすぎという理由で許されないのですが、大人になったらそんなの自由なので、自由万歳という意味なのです。

それぞれの視点から物語りは語られていきます。桐之輔という、海外を遊学してきた叔父さんが、自由な大人で、厳しいしつけの中で、ちょうど良いバランスを取っているんです。こっそり大人な場所に連れていってくれたり。

母親が違う、父親が違う、という子供もいるんですが、柳島家は、それをすんなりまるで当たり前のように受け入れて平等に育てます。この辺がとても江國さんらしい所だな。子供たちもとても素直に育ちます。

私が大好きだったのが陸子。図書室が大好きで、弟を大切にしていて、いきなり小学校に通わされる時期があるけれど、どんなにつらくても、芯が強いので、必死で頑張ります。綺麗な家でずっと育ってきた陸子からしたら、小学校なんて、不潔のかたまりなのです。汚い言葉を使う男の子とかもいるし。自分というものをちゃんと持っているから、大学には行かない、と決め、文章を書き、作家になるんです。すごく素敵。

辛い出来事もあるのですが、柳島家で育ったみんなは、世間の価値観に惑わされず、幸せなんです。本書を読むと、他人の目を気にせず、私は私らしく生きていこう!と前向きなパワーをもらえます。

+既読の江國香織作品+
『きらきらひかる』
『ぬるい眠り』(きらきらひかるのその後が収録)
『赤い長靴』
『ウエハースの椅子』

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