『新潮』2022年6月号
新連載 町屋良平「生活」第一回130枚
父は作家で母は駆け落ち、夢もなければ金もない二十歳のかれは今を生きる。書道をしてすきな服を着て――流れる時間を摑む挑戦作!
黒川創「いくらかの男たち」
互いに気持ちが通じる相手との性体験が道しるべだった。性愛と暴力をめぐる連作最終章。
最果タヒ「詩人ちゃん・キル・ミー」(15)連載完結
第46回川端康成文学賞発表
受賞作 上田岳弘「旅のない」
6月18日に漢検1級を受けてきました。私の住んでいる市では個人受験が開催されないので、実家に泊まり込んでの受験となりました。1回目・・52点 2回目・・99点ときて、今回自分なりに自己採点してみて多分130点らへん。1年以上かけてやっと1級へのスタートラインに立てた気がします(;^_^A。亀の歩みですが漢字は楽しいので頑張ります。
<評価>★★★★☆
「生活」町屋良平・・新連載1回目。これは好みの作品の予感。主人公がふわふわしていて現実感が希薄。江國香織作品に雰囲気が似ていました。こうゆうの好きなんですよね~。感性が豊かで丁寧な感じ。主人公の椿くんは二十歳でフリーター。貧乏だけどオシャレが大好き。父親は作家で母親は駆け落ちして出て行った。設定からして非現実的なにおいがします。続きが楽しみ!
「いくらかの男たち」黒川創・・黒川さんの作品は初めて。しみじみと上手いなあと感じました。娘を持つ父親になった時に振り返って思い出す過去の女性とのあれこれ。主人公は彼女以外とも体の関係を持っていたんですが、ヒッピーのフリーセックスからの影響を受けていた世代。
私たちは色んな事を忘れていくけど、忘れない事もある。そして、どれを忘れて、どれを覚えていることになるのか、あらかじめ知っておくことは出来ない。むしろそれこそが、いくばくかは、生きているということの意味なのかもしれない。あの時出会った「ある女たち」は「いくらかの男たち」に差し替えられる。
〇〇さんの事を知っている、と思えるようになるには、あとに続く歳月が必要。その時その時の世相やら色んな事をひっくるめて俯瞰してこそ見えてくる物があるのかな、と思いました。ちょっと懐かしいような切ない気持ちにさせられました。
「旅のない」上田岳弘・・第46回川端康成文学賞受賞作。芥川賞をとった「ニムロッド」より分かりやすくて面白く感じました。主人公はメーカーに勤務しながら小説も書いている男で、仕事先で村上という子煩悩そうな男性と知り合うんですが、途中で実はこの村上は名前も経歴も嘘だという事が分かって・・・。
「旅」って、帰る場所があるから「旅」と言えるんですよね。帰る場所を持たずにさすらっている人はそれはもう旅ではない。ただの移動。じゃあ、心の帰る場所を持たない人は?一見、「旅」という行動を書いているように見えるけど、実は心を描いているのかな、と感じました。「晴れやかな、自由な心」。
上田作品はとても文学的なので、他の作品も読んでみたいと思いました。