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『鯨オーケストラ』吉田篤弘


人はみな、未来に旅をする

『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』
そして――。
静かに心が共振する、希望の物語。

僕は地元のラジオ局で深夜の番組を担当している。
ある日、17歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、
リスナーから、僕によく似た肖像画を見た、と葉書が届く――。
土曜日のハンバーガー、流星新聞、キッチンあおい、行方不明の少年、多々さん、鯨オーケストラ――すべてが響きあって、つながってゆく。
小さな奇跡の物語がここに終わり、ここから、また始まる。


<評価>★★★★☆

『圏外へ』の世界観が大好きなので吉田篤弘さんの他の小説も読んでみました。読みながら「あれ?これ知ってる」となったワードがいくつかあったのですが、本書は鯨三部作と呼ばれるシリーズの三作目だったようです。「流星シネマ」(既読)と「屋根裏のチェリー」(未読)に続く三作目ですね。今度「屋根裏のチェリー」も読んでみようと思います。

今回の主人公である曽我さんは地元のラジオ局で深夜の番組を担当している男の人で、個人的にラジオは好きなのでワクワクしながら読みました。ラジオって基本的に静かに話す方が多いので癒されるんですよね。ただ私の住んでる所は田舎なのでお目当ての人の番組を聞くにはラジコに課金しないといけないんですよね。なので代わりにYouTubeのラジオっぽい動画を流したりしています。(近代文学について語る書斎ライブ配信「みちくさの日々」を最近はよく聞いています)。

吉田篤弘さんって一部の人たちに物凄く人気がありますよね。読了後に穏やかで優しい気持ちになれますし、淡々とした文章なので寝る前に読むとスーッと眠れる気がします。ドキドキする小説や怖い小説を読んで寝るとだいたい悪夢にうなされてしまいます(;^_^A。

曽我さんは若い時に自分の絵を描いてもらった事があるんですが、その絵がとある美術館に飾られている事が分かり、いろんな人と出会う事になります。吉田さんの作品を読むと「人と付き合うのって素敵なことだな」と素直に思えるんですよね。

あと、曽我さんはブログを書いていて、内容は美味しかったハンバーガーについてなんですが読みながらハンバーガーを食べたくて仕方ありませんでした。ジャンクな食べ物を食べると怠惰になるという実験結果が出たと知った時からもう何年もマクドナルドに行ってません。たまになら食べていいのではないかとも思います。

オーケストラも登場するので、クラシック音楽を流しながら読むと楽しい作品だと思いました。

『Q』呉勝浩


圧倒的な「いま」を描く、著者史上最大巨編

千葉県富津市の清掃会社に勤める町谷亜八(ハチ)は、過去に傷害事件を起こし執行猶予中の身だ。ようやく手に入れた「まっとうな暮らし」からはみ出さぬよう生きている。唯一の愉しみは、祖父の遺したアウディでアクアラインを走ることだった。ある日、血の繋がらない姉・ロクから数年ぶりに連絡が入る。二人の弟、キュウを脅す人物が現れたというのだ。
キュウにはダンスの天賦の才があった。彼の未来を守るため、ハチとロクは、かつてある罪を犯していた。折しも、華々しいデビューを飾り、キュウは一気に注目を集め始めたところである。事件が明るみに出ればスキャンダルは避けられない。弟のため、ハチは平穏な日々から一歩を踏み出す。
一方、キュウをプロデュースする百瀬は、その才能に惚れ込み、コロナ禍に閉塞する人々を変えるカリスマとして彼を売り出しはじめた。
と名付けられたキュウは、SNSを通じ世界中で拡散され続ける。かつてない大規模ゲリラライブの準備が進む中、
への殺害予告が届く――。
抗いようのない現実と、圧倒的な「いま」を描く。世界をアップロードさせる著者渾身の一作。


<評価>★★★☆☆

出版社が書店に配るプルーフの形で読みました。「小学館、2023年の大本命!」と書いてあったのでかなり期待して読んだのですが、現実感が感じられず冗長に感じました。テレビの画面越しに映画を観ているような感覚ですね。

このお話になくてはならない存在が「キュウ」というダンスの天才である美少年なんですが、そのキュウの魅力があまり伝わってきませんでした。キュウのダンスを観た人は「金縛りにあって呼吸を忘れる」とか「気づいたら泣いていた」という状態に陥るのですが、私にはあまりピンときませんでした。

まあおそらく私はよっぽど期待をして読んでしまったというだけでしょうね。普通に読んでいたら「面白かった!」となったのかも知れません。

後半はとにかく派手でダンスだけではなくアクションも激しいので、映画化したら楽しそうだと思います。あと、現実を忘れて本に没頭したい人にもおススメです。

「おまえは輝け。太陽が嫉妬するくらい」というフレーズが東野圭吾さんの「白夜行」みたいでカッコイイですね。

呉勝浩さんは「爆弾」も「スワン」も直木賞候補に選ばれているので、そちらも読んでみたいです。爆弾は話題になりましたよね。

『君の話』三秋縋


架空の青春の記憶を植えつけられた青年は、その夏、実在しないはずの幼馴染と出会う。これは、始まる前に終わっていた恋の物語。『三日間の幸福』や映画化作品『恋する寄生虫』の著者による最新作、待望の文庫化


<評価>★★★★☆

読了してから時間が経ってしまったので細かい部分は忘れてしまいましたが、とても印象に残る小説でした。夏になると再読したくなる小説ですね。

今回も恋愛小説というよりはSF小説であり、謎があるのでミステリー小説とも言えると思います。いや~三秋さんって不幸せな人間を描くのが上手いですね。ネガティブですぐにクヨクヨしてしまう私には共感する箇所が多かったです。

この小説の世界では「義憶」と呼ばれる疑似記憶をすりこむことが可能で、例えば辛い学生生活を送った人には楽しい学生生活の義憶をすりこむことでポジティブに生きれるようになる、みたいな感じです。

「一度も会ったことのない幼馴染がいる。」という文章で物語は始まります。主人公の僕には「夏凪灯花(なつなぎとうか)」という幼馴染がいる記憶があるのですが、それは義憶の産物だと本人も自覚しています。でも花火大会の日に夏凪灯花本人としか思えない人物を見かけてしまうのです。

この夏凪灯花がその後とる言動がとにかく不可思議で読みながら「どういうことだ?」と疑問に思うのですが、後半の灯花のパートを読むとその理由が分かります。ミステリーが好きな人はあれこれ推測しながら読むと面白いかも知れません。

騙されるもんかと冷たい態度をとる僕に灯花は料理を作ったりいろいろ尽くすのですがその理由を「だって、そういう約束だもん」と言うんです。その「約束」が何なのかとても気になりました。

義憶技工士という職業が出てくるんですがこれになるには想像力が必要なので、普段空想や妄想ばかりしている私はやってみたくて仕方ありませんでした。

三秋さんの文章はロマンチックで素敵です。「物語というのはその気になればどこまでも書き続けることができる。にもかかわらずどんな物語にも終わりがくるのは、書き手ではなく物語自体がそれを求めるからだ。その声を聞いてしまったら、たとえどんなに話し足りなくても、適当に折りあいをつけて物語から立ち去るほかない。蛍の光を聞いた買い物客みたいに。」

『恋する寄生虫』三秋縋


これは、「虫」によってもたらされた、臆病者たちの恋の物語。

何から何までまともではなくて、
しかし、紛れもなくそれは恋だった。

「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。
しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――。


<評価>★★★★☆

私は一時期ゲームにはまっていた時期があって、ネット上のゲームサイトで仲良くなった本好きの女性から教えてもらって初めて読んだのが三秋縋さんでした。「スターティング・オーヴァー」も「三日間の幸福」も「いたいのいたいの、とんでゆけ」も「君が電話をかけていた場所」「僕が電話をかけていた場所」も全部読みました。

三秋さんは設定にSF要素が入っていたり、一般的ではない形の恋愛小説を書かれるので毎回ワクワクしながら読んでいます。

今回も大満足です。★5にしなかったのはページ数が少なく感じたからです。これで大長編だったら間違いなく★5です。読了した後に帯にある「操り人形の恋で、何が悪いというのだろう?」という言葉に涙が出そうになりました。

「強迫性障害」「潔癖症」「寄生虫」「〇〇恐怖症」「失業中の青年」「不登校の女子高生」というワードで感動する恋愛小説が書ける三秋さんってすごいなあと思います。

私は生まれつき神経質で特定の数字に執着する子供でした。数字の3にこだわっていて、小学校から帰る時の歩数を3の倍数にしないと嫌だったり、ガードレールを3回ずつ触りながら歩く変な子供でした(大人になるにつれてヤバいと感じて頑張って封印しました)。好きでやっているというよりは、やらないとひどい罰が当たる感覚ですね、やると安心するみたいな(;^_^A。

なのでいきすぎた潔癖症で会社に勤務することができなくなった主人公の気持ちが分かりますし、佐薙ひじり(女子高生)が抱える「〇〇恐怖症」の気持ちもよく分かります。一般的に「気にしなきゃいいじゃん」と言われることをひどく気にしてしまう人の気持ちや思考回路がありありと理解できます。

ラストは決して明るくないですし、切なくてたまらないのですが、三秋作品ってなぜか読了後に穏やかで優しい気持ちになれるんですよね。過去作でも似たような気持ちになったのを覚えています。

本作は中古で購入しましたが、「君の話」をちょうど図書館で取り寄せてもらったので今から取りに行ってきます。読むのが楽しみです(∩´∀`)∩。

『宙ごはん』町田そのこ


この物語は、あなたの人生を支えてくれる

宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。


<評価>★★★★★(満点!)

本屋大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」は何となく未読なんですが、図書館で本作を見つけたので読んでみました。

感想としては「・・・さすが本屋大賞をとる人。ものすごく良い!」です。ラスト50頁ぐらいはずっとシクシク泣きながら読み進めました。大人になって泣く時って少しの恥ずかしさがあるけど、今回は「素直に泣くって大切だよね?」と思いながら泣きました。

読む前は「宙ごはん」というタイトルから、何かで心や身体の元気をなくした人たちが美味しいごはんで癒されるお話だろうな、と想像していて正直もう書き尽くされているんだよな、と生意気に思っていました。

でも実際に読んでみると、確かに題材としては親に十分に愛されなかったり、毒親に育てられたりしている人たちが出てきて書き尽くされた感じなんですが、町田さんが書くとなんだか新しいんです。今までにこんな小説読んだことがないと、新鮮な涙が出ました。

凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」や本作「宙ごはん」はどちらも人気がありますが、共通しているのは「書き尽くされてきた題材でも書き方しだいでいくらでも面白く書ける」ことだと思います。

あと本作の優れている点は、最初と最後で登場人物の見え方がガラッと変わるところだと思います。主人公の宙(そら)には自分を産んだ花野(カノ)さんと、自分を育ててくれたママ(カノの妹)がいるのですが、この2人のイメージが途中でひっくり返ります。そして思うんです、「100点の母親なんていないよね。長所もあれば短所もあるのが人間だよね」と。

全体的に重いお話だし、悲しい出来事がいくつも起きるので読んでいてハッピーな気分にはなれないですが、「自分だったらどう思うかな?どう行動するかな?」と常に考えさせられて、間違ってもいいから人として一生懸命に正しく生きていきたいなあ、と強く思いました。

印象的な文章が結構あって、主人公の宙は家族が描いている小説を読むのが好きなんですが、その理由を問われてこう答えます、「多分、本の中に自分の探してる答えがあるかもしれないと思ってる、から」。私の場合は答えを探すというよりは、自分の答えに繋がるヒントを探している感覚ですね。答えにたどり着くまでの道程みたいな・・。

他に印象的だったのは、「傷ついた人の涙を忘れないで。そして二度とこんな哀しいことが起きないように、考えるの。どうしたらいいのか、考えて、行動するの」、です。シンプルだけどとても胸を打たれました。

町田さんは「52ヘルツ~」で本屋大賞を受賞して、その後も「星を掬う」がノミネート作品となっていますね。どちらも重たいお話みたいなので、少し時間を空けてから読んでみたいです。

タイトルに「ごはん」とついていますがご飯の描写はあまり多くなくて、登場人物たちの心理描写の方が多かったです。辛いことを経験した人のお話を読むと、自分もひねくれることなく愚直に頑張ろう、と思えます。
わかについて
漢検1級勉強中でのんびりペースでの読書ですがよろしくおねがいします。 気軽にコメントもらえると嬉しいです♪

やま☆わか

Author:やま☆わか
 HN:わか

 

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